2018年度 長崎大学(経済学部)公開講座のご案内


今年も標記公開講座を企画しましたのご案内します。

テーマは、「地域の企業やNPOを支える人々の想いと取り組み」。近年、地域社会の持続可能性を高めるために、社会性を有する企業やNPOの育成や創出に注目が集まっています。社会性を有する地域の企業やNPOを、人、モノ、金、情報などによって支える人々の想いや取り組みに触れることで、地域の企業やNPOの今後について、受講生の皆さんとともに考えます。

講座の概要については、以下の画像、もしくはリンク先のPDFファイルをご覧ください。

180923公開講座案内

皆さんと講座でお目にかかれることを楽しみにしています。


人間都市長崎市


昨年、専門ゼミで買い物弱者について研究してきたグループが、そもそも現状把握が甘かったという反省の下、卒研ゼミで振り出しに戻りました(笑)

長崎市の買い物弱者、フードデザート等については、少数ですが定量的な空間情報を用いた先行研究や行政計画が存在します。しかし、それらを参考にしつつも、定性的な情報が欠けるなかで、大ざっぱにいえば、理想-現実=問題→課題・・・において、現実が十分わかってない自分たちが課題について考えるのはおかしい、という結論に達したようです。しかも、シェアした記事にあるように、現状把握に加えて、理想像、つまり長崎市に暮らす人々の一生を具体的にイメージできなければ、いつまでたっても課題にたどり着くことはないということにも気づいたようです。

長崎には「だれもが人間らしく暮らせるまち、それも“長崎に合った暮らしやすさ”を、自分たちでつくっていけるまち」=人間都市というビジョンがあります。ここでいう長崎に合った人間らしい暮らし方とはどういうものなのか、まずは彼らなりに想像する必要がありそうです。

そして、東日本大震災など自然災害からの復興現場でいわれる「はさみ状格差」が、長崎でも発生すると考えられます。たとえば、人口が減少するなかで、平地の市街地に大量のマンションが供給されれば、斜面地がどうなるのか、想像に難くないでしょう。

ちなみに、農林水産政策研究所が平成22年国勢調査に基づいて食料品アクセスマップを推計した際のデータをGoogle Earth上で表示すると、こんな感じになります。水色→茶色へと生鮮品販売店舗まで500m以上の人口割合が高く、今回うかがった赤ピン部の鶴の尾団地は100%となっています。

話は変わりますが、長崎市の立地適正化計画では、商業や医療・福祉などの都市機能について定量的な評価が試みられており、市民の80%をカバーしていることから充足という言葉をもって語られています。このことをとやかくいうつもりはありませんが、残りの20%を忘れない、そもそも80%の定性的な把握にこだわりたいですね。

またまた震災復興の話になりますが、ビートたけしさんもいったように、●人が死亡した災害があったのではなく、1人が死亡した事件が●件あったんだ、と語られることがあります。ウチのゼミ生には、こんなとらえ方を当たり前とする地域人になって欲しいと思います。もちろん私も、長崎市が人間都市として、朝起きてから夜寝るまで、平日と休日、子どもと大人・・・など、市民1人1人の人生やシーンを具体的に描き、共有し、それを市民の1人も置き去りにせずに実現できるよう力を尽くしたいと思います(^^)


サンサンガクガク会議 in YPU


昨日は山口県立大学国際文化学部斉藤研究室、「クリスマス市 山口」を担う企業、地域おこし協力隊のの皆さんと長崎大学経済学部山口研究室のメンバーで、「サンサンガクガク会議 in YPU」を開催しました。

文字通り、2地域のサンガクが集い、智恵や汗を持ち寄って「クリスマス市 山口」の課題を越えていこうという半日のプログラム。

①クリスマス市 山口の主要な会場である山口サビエル記念聖堂にて現地見学

②クリスマス市 山口の概要を共有。

③クリスマス市 山口をさらに楽しむ仕掛けをサンガクガクグループで検討、全員で共有

④クリスマス市 山口を担う企業の皆さんからの講評

⑤斉藤研究室の皆さんお手製の瓦そばに舌鼓を打ちながら交流

 

具体化で。きるぞ、なんてアイデアが提示され、充実した時間となりました。そして、特に見習いたいことが・・・

それは、斉藤研究室の面々が、たとえば、秋穂霊場八十八ヶ所は・・・、と語った学生のように、恐らく〇〇に関して自分が一番知ってるぞ、という強みを持っていることです(他のテーブルでウチの学生も同じことを感じていたようなので、たぶんそう)。色々な場所や分野で皆で集まって・・・という催しをたくさん目にしますが、テーマと異なる場所や分野でかまわないので、何かをやり遂げた経験、何かに拘って得た知識を持つ人が集まると、上のワークでの議論も具体性を増し、実現に近づくな~と。

ということで、ウチのゼミ生には、彼らが研究に取り組もうとしている造船業や買い物弱者について「えっ、先生そんなことも知らないんですか?わかんないんですか?」と言えるようになって欲しいな~と思った1日となりました。(だから帰り道には、彼らには迷惑だったでしょうが、私のこだわりを3時間くらい語っておきました(笑))

斉藤先生をはじめ、山口の皆さまには大変お世話になり、ありがとうございました。


平成29年度長崎大学公開講座のご案内


<平成29年度長崎大学公開講座のご案内>

今年も素晴らしい方々を講師にお迎えできることになりました!

是非ご参加ください。

(以下、テキストと画像は同じ内容です)

1.テーマ「地域経済・社会が求める人材の想いと取り組み」

地域が、社会が豊かになるために、今どのような人材が求められているのか。性別、世代、NPO、企業や行政など所属する組織の有無や種類を問わず、地域・社会を変えた、変えようとしている人の想いや行動に触れながら考えてみます。

2.日時

平成29年10月18日(水)~11月15日(水)毎週水曜日 (全5回)19:40~21:10

3.対象・定員

上記テーマに関心のある方(定員50名)

4.会場

経済学部新館209・210教室(長崎市片淵4-2-1)

5.講師

第1回 10月18日(水)株式会社和える aeru gojo ホストマザー 田房夏波 氏

https://a-eru.co.jp/

第2回 10月25日(水)一般社団法人SINKa 代表理事 濱砂 清 氏

http://www.sinkweb.net/

第3回 11月1日(水)株式会社ホロニック 代表取締役 長田一郎 氏

http://www.hol-onic.co.jp/

第4回11月8日(水)長崎大学経済学部 准教授 山口純哉

https://www.facebook.com/yamaguchi.junya

第5回11月15日(水)Patagonia 日本支社長 辻井隆行 氏

http://www.patagonia.jp/home/

6.講習料

6,200円(5回分)

(講習料は、お申し込み後にご案内いたします銀行口座へ事前振込となります)

7.申込方法

電子メール又はFAXで下記へお申し込み下さい。

(講座名、氏名(フリガナ)、住所、電話番号を明記してください)

8.申込期間

平成29年9月5日(水)~平成29年10月10日(火)(必着)

(受付期間を過ぎた場合は、電話にてお問い合わせください)

9.お申込先・お問い合わせ先

〒850-8506 長崎市片淵4-2-1 長崎大学経済学部支援課総務係

TEL: 095-820-6305 FAX: 095-820-6370

E-mail: ecsoあっとまーくml.nagasaki-u.ac.jp

*あっとまーくを@に修正してください。

10.備考(講座内容についてのお問い合わせ)

長崎大学経済学部・准教授・山口純哉

junya-yあっとまーくnagasaki-u.ac.jp

*あっとまーくを@に修正してください。


長崎市新庁舎建設基本設計メモ


長崎市の新庁舎建設基本設計の受託者を決定する公開プレゼンテーションが催され、受託者が決定しました。

長崎市新庁舎建設基本設計に係る受託者等の決定について

(2017年6月5日現在、審査講評及び会議録については、後日掲載します、となっています)

提案の内容は技術提案書の通りです。ただし、以下の但し書きがついています。

※この技術提案は、設計者を選定するためのものであり、そのまま設計案となるものではありません。
今後、広くご意見をいただきながら、長崎市と設計者で詳細な設計を進めていきます。

 ということで、これからの議論が予定されているのかもしれませんが、少し気になることを備忘録として。なお、公開プレゼンに参加された事業者の皆さんは、長崎市の長崎市新庁舎建設基本計画に基づいて提案したにすぎません。したがって、以下のメモは、技術提案への批判等ではありません。

  • 20階建て、90mという高さは「地域力でのまちなか再生-まちなか再生計画策定検討委員会報告書」「長崎市まちなか再生ガイドライン」に示された、すり鉢底から山々の稜線が見えること、すり鉢の斜面から海が見渡せること等を阻害するのではないか。また、世界新三大夜景に認定されたことを機に紹介されるようになった立山からの眺望を害すのではないか。
  • 長崎市では地域コミュニティの仕組みづくりに併せて、行政サテライトの再編成が予定されており、本庁-総合事務所(4カ所)-地域センター(20カ所)という体制が想定されている。そして、原則的に市民の手続きと相談は地域センターで行うとされているため、本庁にどの程度窓口がいるのか。ちなみに、長崎市新市庁舎建設基本計画では、行政サテライト機能の再編成により60名の職員が新庁舎に配置されなくなる(p.32)とだけ記述されており、機能面から建物の設計を規定するような記述は見当たらない。
  • 2018年度より、長崎市市民活動センター「ランタナ」の直営から指定管理制度への移行が予定されており、今後も今までと同じ旧市長公舎の利用が予定されている。また、交流拠点施設の整備検討では、同施設に市民交流の機能を持たせることが、(仮称)長崎市交流拠点施設整備・運営事業 募集要項 に謳われている。市民交流という言葉の定義は不明だが、市民活動や協働とは無関係ではないと考えられる。長崎市における市民活動もしくは協働の拠点を何処に求めるのか。旧市長公舎、新市庁舎、交流拠点施設、市役所跡、総合事務所(仮)、地域センター(仮)・・・。
  • 交流拠点施設の整備検討においては、会議等の開催にかかる機能の高い利便性を実現するためにワンストップが望ましいと考えられますが、アフターコンベンションについては、できるだけまちなかの回遊を促すことが求められます。これと同じように、市民を市庁舎に閉じ込めるような行政手続き等以外の過大な機能を備えることが望ましいのかどうかについて、十分な検討がいるのではないか。

以上が市庁舎の建て替えにあたって気になることの一部です。市を俯瞰できる市民の声も聞きながら、職員の皆さんの仕事の価値が高まるような市役所となることを期待しています!(^^)

余談になりますが、市庁舎以上のビッグプロジェクトである交流拠点施設の整備検討も進んでいます。現在、公募がスタートし、募集要項等に関する質問に対する回答が公表されたところですが、こちらにも気になることが・・・。募集要項等に関する質問に対する回答を見ると、公募の現状がよく分かりますので、時間のある方はご覧ください(^^;)

たとえば、地域経済にかかる記述について、提案様式集にはMICE、ホテル、その他民間収益施設それぞれの経済波及効果を記載することとなっていました。しかし、募集要項等に関する質問に対する回答を見ると、応募者からMICEについて

経済波及効果の試算が必要とありますが、算出方法や適用する 範囲が異なるだけで、非常に大きな数値の違いが出るため、公平 な審査を行う上で障害となる可能性があります。算出に必要な計算式や考え方などをお示しください。難しい場合は、経済波及効果の項目をなくしていただくようお願いたします。

と指摘され、

経済波及効果の項目は削除することとします。事業者決定前後に関わらず、市が提案内容に基づく経済波及効果を算出するにあたり、必要な資料等の提出等ご 協力いただくことになります。

と回答しています。ホテルやその他民間収益施設の部分は削除されていないので、何でMICEだけ削除?というツッコミも考えられますが、地域経済の観点から気になるのは、市が波及効果を計算するためにどんな資料を応募者に請求するのかです。単純にも複雑にもなるこの項目の取り扱いに個人的には注目しています!

今の長崎市、ソフトもハードも今までの枠組みを変える大きな動きが目白押しです。お世辞にも十分だとは言い難い庁内の横連携を、市の目的を共有した上で進めください!


長崎市小学生による「まちづくり」アイデアコンテスト


小学生による「まちづくり」アイデアコンテスト、本日(2016年11月24日)、長崎市立図書館新興善メモリアルホールにて開催されました!

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2015年12月に施行された「長崎市よかまちづくり基本条例」に基づく子どもたちの参加を促す第一歩として開催されたコンテスト。条例の制定をキッカケに、10年ほど前に熊本県の宮原町(現氷川町)で小学生がまちづくりに参加している様子を見て以来、何とか実現できないかと考えてきた取り組みが長崎市で形になりました。

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応募件数は約700件。そのうち、低学年4名、中学年4名、高学年5名の計13名がプレゼンテーションに臨みました。私が最も印象に残ったのは、中学年の女の子が語った「荷物を抱えて階段を登るおばあさんが大変そうだったから、手伝いましょうかと声をかけたかったけど、恥ずかしくて声をかけられなかった」というフレーズです。彼女は、この経験を基に「まち」について考えるようになったのではないかということが紙上から、発言から伝わってきました(^^)こういった他者を想いやる感覚が、まちづくりに関わるエンジンになるんでしょうね!

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他者を想いやるといえば、昨日のNPO法人グリーンウッド自然体験教育センター代表理事辻さんの講演に、泰阜村に山村留学している子どもたちは、次年度の子どもたちのために薪を割る、という話がありました。当然、自分たちは前年度の子どもたちが割ってくれた薪を使うわけです。つまり、見えない相手へ薪のリレーが続いているわけです。

今日明日か100年後か、隣近所か地球の裏側かなど、見える見えないを問わず、他者に想いを馳せることができる市民がどれだけいるのか。辻さんの言葉を少しお借りすれば、そういった市民を育てること、育つ環境を整えることの大切さを改めて認識する2日間でした(^^)


「くまカフェ」への支援をお願いします!


熊本地震の避難所で「くまもと健康支援研究所」が運営する「くまカフェ」が、readyforで支援を求めています。「くまカフェ」は、被災者、特に高齢者の【日中活動量の減少・人と人のつながりの低下】を目指す活動です。「くまカフェ」の活動は、被災高齢者の健康維持や独居死の防止に繋がると考えられます。しかし、未だ「くまカフェ」の継続的な活動を担保する十分な基盤が形成されてるわけではありません。そこで、皆さんへ↓のリンクからの支援をお願いする次第です。

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熊本の避難所で医療スタッフが常駐するくまカフェを運営!

私が「くまカフェ」への支援をお願いするのは、仮設住宅や復興住宅での「独居死」が1人でも減ることを望むからです。

コミュニティの再生が、被災者、特に高齢者の避難所、仮設住宅や復興住宅における健康維持、ひいては独居死の防止に繋がることは、阪神淡路大震災や東日本大震災からの復興の現場でも、繰り返し叫ばれてきたところです。

阪神淡路大震災において、仮設住宅、復興公営住宅で何名が独居死されたかご存じでしょうか?神戸新聞によると、判明している限りでも仮設住宅で233名、2000年以降の災害復興住宅で897名の1,130名です[1][2]

もちろん、政府や地方自治体も、上のような阪神淡路大震災の経験を踏まえて、「(東日本大震災からの復興にかかる)被災者の孤立死防止対策」を講じています。

しかし、東日本大震災でも、2015年末には岩手、宮城、福島の仮設住宅での孤独死が188名に達しています[3]。そして、孤独死を防ぐためにも、被災者同士の交流を如何に促すかが課題となっています[4]

[1]神戸新聞「独居死20年で1000人超す 阪神・淡路大震災仮設、復興住宅で」2015年1月10日

[2]神戸新聞「兵庫県内復興住宅 独居死33人」2016年1月13日

[3]河北新報「<仮設住宅>被災3県孤独死188人」2016年3月1日

[4]毎日新聞「復興住宅、孤独死11人 被災3県、1年で 交流支援が課題」2016年3月4日


おおむら夢ファーム シュシュ


2016.6.22

基礎ゼミ(2回生半期ゼミ)と専門ゼミ(3回生2年間ゼミ)の学生とともに長崎県大村市の「おおむら夢ファーム シュシュ」へ。基礎ゼミ生がソーシャルビジネス、専門ゼミ生が農商工連携に関心があったために実現した訪問です。山口社長自ら施設を案内、レクチャーいただくとともに、ぶどう畑のレストランでの食事にもお付き合いいただき、贅沢な時間を過ごしました。001

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山口社長からは、「なぜ」シュシュが起ち上がったのか(目的)から、その目的の下で採用されている商品開発から販売に至る仕組み(手段)まで、丁寧に説明していただきました。いつものように、3分に1回発せられる洗練されたおやじギャグも忘れません(笑)

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特に山口社長と内容を打ち合わせたわけではありませんが、学生に伝えて欲しかったことも全て網羅されていました。たとえば、

・農業の社会的な位置づけ・イメージを変えたい、変えるべきという事業を起こした動機、

・消費者の笑顔を第一にしながらも、農家(農業)、地域社会、自社といった三方良しに配慮した仕組み、

・どんなに細かいことであっても、上記2点が絶対にブレないこと

などです。そのほか、山口社長からは、働くということ、生きるということ、社会とかかわることなど、学生へのメッセージを多数いただき、学生も自分の価値観を揺さぶられたようです。

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ということで、笑顔の山口社長、笑顔の従業員の皆さんに大変お世話になったシュシュ訪問でした。お忙しいなか対応いただき、ありがとうございました!

ところで、物事には、「なぜ」、「なにを」、「どうやって」がつきものですが、学生を取り巻く環境には、「なにを」、「どうやって」があふれていて、「なぜ」を問う機会が少なくなっています。また、「なぜ」を問うことがあっても「自分の成長のため」とか「売上げアップのため」という言葉を良く聞く気がします(^^;)決してそれらを否定するわけではありませんが、せっかく経済学部で学んでいるのですから、他者の「なぜ」を通して社会の今に触れてながら、自らの「なぜ」を磨いて欲しいと思います。

今後も学生たちには山口社長のような「なぜ」を語れる方々と交わる機会を設けたいと思っています!


実践型初年次セミナー(経済系)用リンク


2016年度長崎大学経済学部実践型初年次セミナー(経済系)用リンク

長崎市の地方創生をセミナーの素材にするにあたって、参考になりそうなwebサイトへのリンクです。参考文献や他ページへのリンクは適宜追加します

<地域・地方>

長崎市まち・ひと・しごと創生長期人口ビジョンと総合戦略

2015年度長崎市議会地方創生対策特別委員会調査報告書

2015年度長崎市議会地方創生対策特別委員会会議録(↑報告書の基になった議論・2015.12.14)

長崎県および県下市町の地方創生

<統計>

地域経済分析システムRESAS

政府統計の総合窓口

総務省統計局

<政府>

まち・ひと・しごと創生本部

内閣府地方創生推進事務局

政府広報まち・ひと・しごと創生

地方創生政策アイデアコンテスト2015


地方銀行の経営統合・合併と地域経済


2016年2月26日に発表された福岡フィナンシャルグループ(FFG)と十八銀行との経営統合(2017年4月予定)、十八銀行親和銀行との合併(2018年4月予定)には、本当にビックリしました。また「統合、合併による・・・を期待します!」のような好意的コメントや、「SoftbankPepperくんをいち早く導入するなど事業の展開力・スピードがある」という記事など、その後の周りの反応にも少しビックリです。

もしかすると、高いコンサルティング能力を持った行員が地域の企業に寄り添って二人三脚で顧客の幸せに貢献するのかもしれませんし、店舗にはPepperくんしかいない日がやって来るのかもしれません。そして、明るい地域経済の未来が拓かれるというストーリーがホントのところなのかもしれません。私も、心と頭が許せば今回の件を好意的に受け止めたいと思っています。ただ、今のところ地域経済という観点から心配事が先行しています。

ということで、プレスリリース当日に民放各社でコメントした件について、今日たまたま質問されましたので少し補足しておきます。

支店経済(Branch office economy)や分工場経済(Branch plant economy)という言葉をご存じでしょうか?一言でいえば、地域外に本所(本店・本工場)をかまえる地域内の支所(支店・分工場)が、地域の事業所数、雇用者数、売上高を支えているという地域経済のあり方を意味します。国内の政令指定都市では、福岡市や仙台市が支店経済の代表格で、北九州や京都が対極に位置します。ちなみに、2014年度の経済センサス基礎調査によると、福岡市、北九州市、長崎市の市内事業所数および市内事業所の従業者数に占める県外本所の事業所数およびその従業者数の占める割合(%)は、下図の通りです。

(ウチの学部で私の講義を受講している学生は、「京都と福岡の自律性は全く異なります。だから、それらを同じ都市という名で呼んで良いのかな?」という私の発言を聴いたことがあると思います。↓のことです)

市内事業所に占める県外本所の支所数および従業者数(%)

県外本所の支所数(%)
県外本所の支所従業者数(%)
福岡市

21.1

 30.5

北九州市

 10.0

19.6

長崎市

 12.3

23.7

出所:平成26年度経済センサス基礎調査・確報集計・事業所に関する集計-第28表 産業(中分類)、単独・本所・支所(3区分)、本所の所在地別民営事業所数及び男女別従業者数(外国の会社及び法人でない団体を除く)-全国、都道府県、県庁所在市・人口30万以上市

支店経済や分工場経済が地域経済の中で注目されるのは、地域経済の自律性を損なう可能性があるからです。大げさにいえば、地域内に立地する事業所、その従業者、ひいては地域経済のあり方にかかる生殺与奪の権を何処の誰が握るのかという問題です。つまり、支所の開設や閉鎖は、支所独自の意思決定ではなく、支所が立地する地域外の本所に握られているため、支所が増えれば、地域経済の自律的・安定的な運営ができなくなるのではないかという懸念です。これは、近年、シャープ亀山工場のように、外来型開発の限界として語られる、誘致した事業所(支所)が本所の決定によって閉鎖・撤退させられることへの不安と同じです。

しかも、地方銀行である十八銀行のFFGとの経営統合は、単に長崎市の企業が福岡市の企業の子会社になったという事象以上のインパクトを持つ可能性があります。それは、十八銀行が、長崎市内の中小企業の資金需要に対応する金融機関であるため、本所であれ支所であれ、長崎市内に立地する事業所への資金供給にかかる最終的な意思決定権を、長崎市外の企業が持つことになるからです。

このような理由から、親和銀行(2007年)、長崎市有数の大規模企業である十八銀行(2017年)のFFGとの経営統合は、長崎市の支店経済化を一層促進し、自律的な地域経済の運営を妨げる可能性があることを今の段階では否定できません。

こんなことを毎日あーでもない、こーでもないと考えているのですが、このような考え方には、いくつもの前提条件がありますので、それが崩れれば、上記のような懸念は画に描いた餅です(^^;)たとえば、効率化を図り、余剰資源をFFGのノウハウの下で新しいサービス、たとえばコンサルティングに投入することで多大な成果があがる、FFGは本当に九州全域のことを平等に考える、中央集権的な統合ではなく分権的な統合で地域に意思決定権が残る等です。

ただ、これくらいの危機感を抱いておかないと、今回の統合・合併を家計、企業や行政の運営に活かそうという積極的対応に至らないのではないかと考えます。

不定期になりますが、銀行のことについては、今後もブログで触れることにしたいと思います。