2016年2月26日に発表された福岡フィナンシャルグループ(FFG)と十八銀行との経営統合(2017年4月予定)、十八銀行と親和銀行との合併(2018年4月予定)には、本当にビックリしました。また「統合、合併による・・・を期待します!」のような好意的コメントや、「SoftbankのPepperくんをいち早く導入するなど事業の展開力・スピードがある」という記事など、その後の周りの反応にも少しビックリです。
もしかすると、高いコンサルティング能力を持った行員が地域の企業に寄り添って二人三脚で顧客の幸せに貢献するのかもしれませんし、店舗にはPepperくんしかいない日がやって来るのかもしれません。そして、明るい地域経済の未来が拓かれるというストーリーがホントのところなのかもしれません。私も、心と頭が許せば今回の件を好意的に受け止めたいと思っています。ただ、今のところ地域経済という観点から心配事が先行しています。
ということで、プレスリリース当日に民放各社でコメントした件について、今日たまたま質問されましたので少し補足しておきます。
支店経済(Branch office economy)や分工場経済(Branch plant economy)という言葉をご存じでしょうか?一言でいえば、地域外に本所(本店・本工場)をかまえる地域内の支所(支店・分工場)が、地域の事業所数、雇用者数、売上高を支えているという地域経済のあり方を意味します。国内の政令指定都市では、福岡市や仙台市が支店経済の代表格で、北九州や京都が対極に位置します。ちなみに、2014年度の経済センサス基礎調査によると、福岡市、北九州市、長崎市の市内事業所数および市内事業所の従業者数に占める県外本所の事業所数およびその従業者数の占める割合(%)は、下図の通りです。
(ウチの学部で私の講義を受講している学生は、「京都と福岡の自律性は全く異なります。だから、それらを同じ都市という名で呼んで良いのかな?」という私の発言を聴いたことがあると思います。↓のことです)
市内事業所に占める県外本所の支所数および従業者数(%)
県外本所の支所数(%) |
県外本所の支所従業者数(%) |
|
福岡市 |
21.1 |
30.5 |
北九州市 |
10.0 |
19.6 |
長崎市 |
12.3 |
23.7 |
支店経済や分工場経済が地域経済の中で注目されるのは、地域経済の自律性を損なう可能性があるからです。大げさにいえば、地域内に立地する事業所、その従業者、ひいては地域経済のあり方にかかる生殺与奪の権を何処の誰が握るのかという問題です。つまり、支所の開設や閉鎖は、支所独自の意思決定ではなく、支所が立地する地域外の本所に握られているため、支所が増えれば、地域経済の自律的・安定的な運営ができなくなるのではないかという懸念です。これは、近年、シャープ亀山工場のように、外来型開発の限界として語られる、誘致した事業所(支所)が本所の決定によって閉鎖・撤退させられることへの不安と同じです。
しかも、地方銀行である十八銀行のFFGとの経営統合は、単に長崎市の企業が福岡市の企業の子会社になったという事象以上のインパクトを持つ可能性があります。それは、十八銀行が、長崎市内の中小企業の資金需要に対応する金融機関であるため、本所であれ支所であれ、長崎市内に立地する事業所への資金供給にかかる最終的な意思決定権を、長崎市外の企業が持つことになるからです。
このような理由から、親和銀行(2007年)、長崎市有数の大規模企業である十八銀行(2017年)のFFGとの経営統合は、長崎市の支店経済化を一層促進し、自律的な地域経済の運営を妨げる可能性があることを今の段階では否定できません。
こんなことを毎日あーでもない、こーでもないと考えているのですが、このような考え方には、いくつもの前提条件がありますので、それが崩れれば、上記のような懸念は画に描いた餅です(^^;)たとえば、効率化を図り、余剰資源をFFGのノウハウの下で新しいサービス、たとえばコンサルティングに投入することで多大な成果があがる、FFGは本当に九州全域のことを平等に考える、中央集権的な統合ではなく分権的な統合で地域に意思決定権が残る等です。
ただ、これくらいの危機感を抱いておかないと、今回の統合・合併を家計、企業や行政の運営に活かそうという積極的対応に至らないのではないかと考えます。
不定期になりますが、銀行のことについては、今後もブログで触れることにしたいと思います。